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【ファンタジー小話 #4】レガリアになっている武器 ポーランド編

ファンタジー小話、第4回目でございます。

今回は第2回でやったレガリアになっている武器のポーランド編。

なお第2回はコチラです。

 

多分ほとんどの人が聞いたこと無い武器の話になると思います。

…とはいえあくまで「小話」ですがw

興味がございましたら是非続きをどうぞ。

 

 

現在のポーランドは共和制を取っていますので、国王は存在しませんが、かつてポーランド王の戴冠式の際に使用され代々受け継がれてきた剣が存在し、現在もポーランド国内の博物館に収蔵されています。

その剣の名前はシュチェルビェツ(Szczerbiec)と言います。

 

シュチェルビェツの持主

シュチェルビェツは、1320年から1764年まで、実際にポーランド王の戴冠式の際に使用されたと伝わる剣です。

なおここで、戴冠式で使用されているからといって、つまりレガリアだと言い切って良いのかという問題が発生しますが…

私が調べた限りでは、少なくとも剣が王の所有物であることは間違いなさそうでしたし、戴冠式で使用するという事は、その剣がただの所有物に在らず特別な意味を与えられていたと想像できるので、レガリアと言ってもいいんじゃないかなと。

 

ヴィエルコポルスカ年代記という文献によると、この剣はボレスワフ1世という人物の剣であったとのこと。

ヴィエルコポルスカ年代記 - Wikipedia

ボレスワフ1世 (ポーランド王) - Wikipedia

このボレスワフ1世、ポーランドがまだ公国だった時代に領土と文化の発展に王効く貢献し、後に当時のローマ教皇ヨハネス19世によって王国に認知され、ポーランド王国初代国王として君臨した人物です。(もっとも国王となった時には体調が悪化しており、国王としての在位期間は1年にも満たなかったようですが)

武勇に優れていたことから勇敢王とも称されています。

まあ歴史解説は歴史警察が怖いのでこのぐらいにして、剣の話にまいりましょう。

 

年代記には

Miał on otrzymać od anioła miecz, którym z pomocą boską zwyciężał wszystkich swoich przeciwników.

彼は天使から剣を授かり、その剣で神の助けを借りて、すべての敵を打ち負かした。

と書かれているそうで(原文読んだわけではないので書かれている"そう"という言い方に留めます…申し訳ない)、なにやら神聖な(もっと言うとキリスト教的な)力を持っている事がうかがえます。

 

また年代記にはシュチェルビェツの名前の由来に関する記述も有るようです。

西暦1018年、ボレスワフ1世率いるポーランド公国は東ローマ帝国と同盟を結びキエフ公国と交戦、これを撃退し一部地域を支配下に置いています。

年代記によると、この際ボレスワフ1世は、当時のキエフ公国の中央門であった通称「黄金の門」を剣で切り付けているらしく、その際に剣がszczerbaになってしまったため、その後Szczerbiec(シュチェルビェツ)と言われるようになったとのこと。

黄金の門 (キーウ) - Wikipedia

szczerbaは日本語で言うと「ギザギザになる」「へこむ」みたいな意味らしいです。

つまりシュチェルビェツは「(刃が欠けて)ギザギザになった剣」的な意味あいみたいですね。

 

因みにこの様子は絵画にも描かれております。

うん、普通にでけぇ門ですね。

というかキーウには復元された黄金の門があるのですが…

めっちゃデカい。

(因みにこの門が現在どうなっているか、軽く調べたんですが情報が出てきません…)

という事は、当然破壊が目的で切り付けたのではありません。

ではどんな理由があったのかというと、境界線を記すため、つまり我々はここまで侵攻してきたぞと誇示するような目的があったとする資料が多いようです。

ただし、違う見解を示している資料も有り、先ほどのヴィエルコポルスカ年代記では…

「この門の様に、最も臆病な王(たぶん攻撃されてるキエフ公国の統治者の事?)の妹は私に与えるのを拒んだが、屈するであろう」

つまりお前のトコのお姫サマは俺が貰っていくぜ的な事(ポーランド語から訳しているので若干異なるかもしれませんが…)を言いたいが為に門を切り付けたんだそうです。ゆ、勇敢だなぁ…w

この様な伝説のあるシュチェルビェツですが、現存するものは1300年代ごろの剣である可能性が高いという測定結果が出ており、本当は誰の持ち物だったのかについては諸説あるとのことです。

 

戴冠式の歴史

シュチェルビェツが初めてポーランド王の戴冠式に使用されたのは、1320年に即位したヴワディスワフ1世の時だとする説が支配的な様です。舌を噛みそうな名前だ…

1434年に即位したヴワディスワフ3世の戴冠式は、その詳細な様子が記された最古の戴冠式です。

剣は祭壇に置かれ、先ず戴冠式を取仕切る大司教が、即位する王に対し剣と王冠を手渡されます。

王はその剣で空中に3回、十字のサインを刻むのだそうです。

剣が最後に使用されたのは、ポーランド最後の国王である、スタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキの即位式でのこと。1764年の出来事です。

つまるところシュチェルビェツは400年以上もの長きにわたって、ポーランド国王の戴冠式に使用されていました。

余談ですがこのあとポーランド・ロシア戦争が起こってポーランド側が敗戦、ポーランド分割によって国が消失し長い間主権国家の地位を失う事になります。第一次世界大戦後の1918年に独立を回復、この時初代国家元首に就任したのが…競走馬ピルサドスキーの名前の元としてもおなじみの、ユゼフ・ピウスツキです。

 

結構いろんなところへ…

このように長い間ポーランドのレガリアとして受け継がれてきたシュチェルビェツですが、長い歴史の中でポーランド国外へと移動したことも有ります。

先ず最初に戴冠式で剣を使用したヴワディスワフ1世の次の王、ガジミェシュ3世。

彼は「木造のポーランドに現れ、レンガのポーランドを残した」と評されるほどの名君だったのですが、死したときに男児の後継者が居ませんでした。

そこで次期国王に白羽の矢が立ったのが、甥でハンガリー国王だったラヨシュ1世(ルドウィク1世とも)。

ヤン・ドゥウゴシュというポーランド人司祭の手記によると、この時ラヨシュ1世は当時のポーランド王国首都のクラクフから様々な品を持ち帰ったと記してあり、その中にこの剣について言及しているそうです。(これも原文を読んだわけではないので。「だそうです」という言い方にさせて頂きます…)

クラクフから持ち帰ったとしている以上はたぶんポーランド国内に移動してるんじゃないかなと。

またその後剣は1412年になってから、後にローマ皇帝になるジギスムントによって、ラヨシュ1世の2代後のポーランド王であるヴワディスワフ2世に返されています。

よってラヨシュ1世とヴワディスワフ2世の間に即位したヤドヴィガ王の即位式では剣は使用されていないそうです。(因みにヤドヴィガ王は女性ですがQueenではなくKingの称号を持つ非常に珍しい人物です。)

 

その後は長らくポーランド国内で保管されてきましたが、前述のポーランド・ロシア戦争によりクラクフプロイセン軍に占領されると、シュチェルビエツは国外へと持ち出され、先ずはポーランドヴロツワフへ、そこからプロイセン王国のベルリンへと移動します。

その後はプロイセン王ヴィルヘルム3せいの命令によって資金調達のため売却されています。

 

この後がまた複雑…

1819年になってポーランドのラバノフ・ロストフスキ王子という人物が、モスクワのアルメニア人から剣を購入したと主張しています。

更にこのアルメニア人は、剣をブルガリアのルセ近くの道端で発見したと主張しているそうです…?

怪しいっすねぇw

明らかに怪しいので、当時の剣を調べたセバスティアーノ・チャンピというイタリア人言語学者も、真贋は非常に疑わしいとの見解を示しているそうです。

その後この剣はロシア人資産家に売却、資産家の死後オークションに出され、これを駐フランスロシア大使が落札。

更に更にこれをモソビエト当局が買収して、サンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館に収蔵されました。

 

暫くはエルミタージュ美術館のコレクションになっていましたが、ユゼフ・ピウスツキが独立したポーランドを率いてポーランドソビエト戦争に勝利し、リガ平和条約が締結。

この条約にはポーランドの財産を返還する内容が含まれており、晴れて剣はポーランドへと帰還することになったのです。

…しかしこうも変遷を経ていると本物なのか?という疑問が拭いきれませんが…

前述のセバスティアーノ・チャンピが下した「疑わしい」という結果に対して懐疑的な見解も当時から存在しており、その後ヤン・ネポムセン・サドフスキというポーランド人考古学者が調査し「いくつかの変更が加えられているが本物である」との見解を示しています。

現在、剣が一般に公開されているかは不明ですが、剣を収蔵するヴァヴェル城は観光地になっているそうです。(なんでも世界遺産登録第1号のうちの一つだとか)

 

うーん、ちょっと長くなりましたねw

ここまで読んでいただいてありがとうございました!

 

 

                       

 

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